心豊かで、やさしく、たくましく。西条幼稚園は創立91周年を迎える東広島市西条の私立幼稚園です。

園長からのメッセージ

おはようございます

西条幼稚園では、ここ数年、子どもたちに「おはようございます」という朝の挨拶を交わすことを重点的に奨励しています。
先生方が子どもたちに「おはようございます」と実践するのはもちろん保護者の方々にも、朝初めて顔を合わすときに「おはようございます」の挨拶を実行してほしいとお願いしています。

幼稚園に通う子どもたちに、日々の保育をとおして、色々な良い習慣を身に付けてほしいと願っています。心身の健全な発達のためには、毎日毎日、早寝、早起き、そして朝ごはんをしっかり食べることが大切です。幼稚園という200名以上の集団の中では、遊具・玩具は順番になかよく使う、使ったら元の場所に片づける、という集団生活ならではのルールを守ることも大切です。

幼稚園の時はもちろん、小学校、中学校、高等学校、・・・そしてやがては社会人になる園児たちに、ぜひ身に付けておいてほしい思う習慣は「自分と他人との間に,心理的な壁を設けないこと」です。適当な言葉がないので、適切な説明が難しいのですが、あえて言葉でいえば「社交性」、「社会性」、「外向性」、「友好性」でしょうか。
この習慣を最もシンプルに具現化したものが「おはようございます」という挨拶です。

次のような実例で考えてみると、「言葉の問題」を超えた「実態」が理解できるかもしれません。

3人の新入社員、Aさん、Bさん、Cさんが入社して一年目、会社の廊下を歩いています。ある朝、Aさんが廊下を歩いていると、向こうから上司のMさんが歩いてきました。Aさんは上司のMさんに気付き、笑顔で明るく「おはようございます」と挨拶しました。
別の日、Bさんが会社の廊下を歩いていて、Mさんに出会いました。BさんはMさんに気付き、Mさんの方に視線を向けて軽く会釈し、すれちがいました。
また別の日、Cさんが廊下を歩いていると向こうからMさんが歩いてくるのに気づきました。その瞬間、Cさんは廊下の窓の外のほうに関心があるかのように、視線を外に向け、すれ違う時もMさんとは視線を合わせませんでした。
Aさん、Bさん、Cさんの個人生活、私的な生活であれば、挨拶をしようがすまいが個人の自由、そもそもMさんが上司であるという関係もないのです。
廊下でのすれ違いは一瞬の出来事ですが、社会の中ではその一瞬、一瞬の出来事が次の段階に大きく関係することがたびたびあります。

たかが「おはようございます」、されど・・・
 上司のMさんは、会社の中で新しく立ち上げるプロジェクト(新製品の開発とか、働き方の改革とか)の一員となりました。そのプロジェクトのリーダーSさんは、プロジェクトのメンバーを選ぶにあたり、新入社員の中からも一人加えようと考え、Mさんに「今年入社した3人の中から一人推薦してほしい」と頼みました。
もちろんMさんは、Aさんを推薦する可能性が高いと思います。そして総勢8名のプロジェクトの一員となったAさんは、Mさん以外の6名の上司に顔と名前と覚えてもらい、仕事ぶり、人柄など見てもらえます。プロジェクトの仕事を通じて、また打ち上げの飲み会などを通じて、Aさんは、仕事上の先輩である上司から多くのことを学ぶことができるのです。

一般社会では、挨拶の有無のみだけでなく、色々な角度からその人の印象を感じています。しかし、印象が良くない場合の多くは、とっつきにくい、気難しい、近寄り難い、煙たい、など、相手との間に「高い壁」を感じるときです。別の表現をすれば、相手に謙虚さ、素直さ、受容性がない場合、傲慢さ、尊大さが感じられる場合です。相手にこのような障壁を感じたら、人は近づかなくなります。
「壁」を作らないようにしましょう。アメリカ人は見知らぬ人でも「ハーイ!」と気軽に声をかけます。とても良い習慣です。
「おはようございます」を大切にしましょう。

第9代 園長 井藤壯太郎

もっと笑顔を!

NHK Eテレの「まいにちスクスク」という子育て支援番組の中に「どう答える?子どもからの質問」というコーナーがあります。

「なんで幼稚園に行かなくちゃいけないの?」とか「雨はどうして降るの?」とか、素朴な難問ばかりです。

これらの子どもからの質問の中でお母さんが一番困惑していた問いは、

「ママはどうすれば笑うの?」

この質問を受けたお母さんは「えっ!」と言葉を失ってしまいました。

何でもよく分かっていると思っていた我が子からの、思いもかけない質問だったのでしょう。

毎日の生活の中で、多くのお母さん方は(お父さん方もですが)、自分が子どもに接するときの顔を、鏡に映してご覧になったことは、ほとんどないのではないでしょうか。機嫌のわるい時の顔、怒った時の顔、悲しいときの顔・・・・

この番組の講師、井桁 容子さん(東京家政大学、ナースリールーム主任保育士)は『親が子どもを見るより、子どもは親をとても良く見ています。
この質問をされるということは、子育てに一生懸命になりすぎて、心が緊張しているということを(我が子に)見透かされてしまったということです。このような質問をされた時は、質問が今の自分を映した鏡だと思って、言われたことを認めましょう。そして、「教えてくれてありがとう」「楽しいのに笑うのを忘れていたみたい」と返して、子どもに心配をさせないように努めていくと良いですよ。』と解説されていました。

笑顔は、話し相手に無言の、そして無限の肯定感、安心感を与えます。

もっと笑顔を、たくさんの笑顔を!

私たちも「笑顔に満ちあふれた幼稚園」を目指しています。

これで、4回のシリーズを終わります。
1回目 赤ちゃんの不思議
2回目 真似る・学(まね)ぶ・学(まな)ぶ
3回目 言葉の発達
4回目 もっと笑顔を!

第9代 園長 井藤壯太郎

ことばの発達

赤ちゃんは、生まれてすぐに外界をしっかり眺め、しっかり真似をしながら成長していきます。「ことばを話す」ことについても同じように、周りにいる人の言葉をしっかり聞いています。最初は、しゃべらなくても単語を脳の中に蓄積していくようです。理解して、蓄積された単語の数が、50から70くらいになった時に初めて発語します。

最初に言葉を話す時期は、個人差が大きく、1歳で2~3語しゃべる子どもいれば、3歳になってもほとんどしゃべらない子どももいるそうです。しかし、早い子も遅い子も共通しているのは、しゃべる内容の順序で、ひたすら聞いている時期を経て、① 単語をしゃべる、② 2語文をしゃべる(助詞などもつける)、③ 過去形で話す、のように進んでいきます。

「○○ちゃん、これ食べる?」という問いに、「うん」、「いや」とか単語でしか答えなくても、周りの大人がしゃべる文章の意味は、ほぼ正確に理解しているのです。日々の生活の中で、子どもの脳の中に蓄積される単語や言い回しが、その後の言語生活、考え方、性格に大きな影響を与えていきます。丁度、日々の食事が、その子の体の発育や健康状態に影響を与えるように。栄養のバランスを考え、有害な食品添加物に気を配るように、子どもを前にしての発言には、十分、配慮したいものです。

第9代 園長 井藤壯太郎

真似る・学(マネ)ぶ・学(マナ)ぶ

赤ちゃんは、見ること、聞くこと、触ることによって、生まれて初めて体験する色々なことを真似て成長していきます。エレペーターなどでたまたま乗り合わせた、お母さんのに抱かれた赤ちゃんの瞳を見つめると、不思議そうな表情をしながら、じっと見つめてきます。何かを読み取ろうとするように一生懸命見返してきます。こういう表情は、赤ちゃん以外では、見たことがないような気がします。初対面にも関わらず、赤ちゃんはほとんど例外なく、じっと見返してきます。「真似るためにじつと観察している」のでしようか。

日本語をしやべるお母さんからは、日本語の音と口の動き・表情を、英語をしゃべるお母さんからは、英語の音と□の動き・表情を、フランス語をしやべるお母さんからは、フランス語の音と□の動き・表情を真似て、学んでいるのです。真似る(マネル)と学ぶ(マネブ)は、同一の起源をもつ言葉です。
習字や踊りなどの習い事で、お手本を真似て、学んでいくように、乳幼児は、身の回りで繰り返される「お手本」の真似をして、成長していくのです。

子は親の鏡」(親の生き方は子どもに反映するので、子どもは親自身を写す鏡である:広辞苑より)という諺がありますが、子どもを持つ親は、この諺の重みを感じながら「よき手本」を示す努力をすることが大切です。

一方で、乳幼児には、一度も見たことのない、体験したことのない行動は非常に難しいのです。家庭内ではめったに経験することのできない、体験することのできない行動は苦手なのです。

3歳児が、4月に幼稚園に入園して、新しい環境になかなか適応できないのは、「保護者の手を離れての生活」のほかに、これまで経験したことのない「他人に囲まれての集団生活」が始まるからです。

幼稚園で団体行動をすることは、大人が考えるほど、簡単ではないのです。一度も「お手本」を見たことがないのですから。

第9代 園長 井藤壯太郎

赤ちゃんの不思議

NHK総合テレビ「地球ドキュメント」で3月29日に「赤ちゃんのヒミツ~驚くべき生命力」が再放送されました。

その中で、赤ちゃんには
① 生まれた時から備わっている能力、と
② 生まれた後に身につける能力
があることが紹介されています。

①の生まれた時から備わっている能力としては、
・5本の指を使って、両手でしっかり握る力
・おっぱいを飲みながら呼吸をする力
・見ること、聞くこと、触ることによって色々なことを真似、学ぶ力など
これらの力によって生き延びてゆき、また色々なことを学習していくことができるのです。

生まれたばかりの赤ちゃんは、世界中のどの言語をも身につける能力を持っているそうです。英語を話す両親をもてば英語を、中国語を話す両親をもてば中国語を、手話を使う両親からは手話を、自然に学ぶことができるのです。耳に入ってくる情報、目に入ってくる情報を、そのまま、素直に、表現できるからです。

ところが、物心つくと、特に大人になると、外国語を聞いても、自分の話す言語に置き換えて、聞き取るようになるそうです。「Come here!」 は「カム ヒア」、発音記号の[Λ]は、「ア」と「オ」の中間、というように、自分がすでに習得している日本語に置き換えてしか聞き取れなくなるのです。赤ちゃんと違って、「ありのままに」見たり、聞いたりできなくなっているのです。
保育にあたっては、この小さな子どもたちのもつ学習力・習得力は「両刃の剣」となって、保護者・保育者にはね返ってきます。

第9代 園長 井藤壯太郎

天賦の「保育」

子どもの保育期間は0歳から6歳までといわれています。子どもが生まれて、一人で歩き、食べ物を食べ、一人で排泄ができるようになるまで、6年もかかるのです。
これは他の霊長類(ゴリラやチンパンジーなど)に比べて、著しく長い期間です。多くの動物は、生まれて数時間~数日で、自力で歩くことが出来るようになります。
この非常に長い「保育」期間は、人間が『直立二足歩行』することと深く関係しています。二足歩行によって、自由になった前脚(腕)で、「器用な手先」を駆使して、多彩な作業ができるようになりました。食料が少なくなった氷河期でも、槍を投げて小動物を捕獲して生き延びることができたのも、二足歩行のお蔭です。

しかし、一方で、直立二足歩行のために、骨盤が著しく変形し、胎児が通るみち(産道)が、他の霊長類に比べてかなり狭くなりました。「難産」は直立二足歩行の宿命なのです。
その上、狭い骨盤の間を通り抜けることが出来るよう、(体の小さい)未熟児の状態で出産する宿命も背負ったのです。
小さな命は、このような人類進化の過程を経て、授けられた貴いものなのです。
出産、育児、保育と、休む暇のない修行のような毎日ですが、人間が人間であるための、理性・知力と引き換えに与えられた「保育」の期間であることに感謝しつつ、保育にあたりたいものです。

第9代 園長 井藤壯太郎

巣立ち

入園式から一ヶ月が過ぎ、入園児たちは幼稚園の生活に大分慣れてきたようです。
雛鳥が成長して、晩春から初夏にかけて巣を離れ出ることを「巣立ち」といいますが、人の一生には色々な「巣立ち」があります。親元を離れて下宿生活を始めるとき、学校を卒業して社会人となるとき、など。

4月8日の入園式が終わって、その翌日、幼稚園の門扉の前で、新入園児が保護者の手元から、先生にバトンタッチされるその瞬間、子ども達にとって人生最初の「巣立ち」です。大声で泣き叫ぶ子、先生に手を引かれてしょんぼり入ってくる子、公園にでも来たかのように楽しそうに走る子、など様々です。
大泣きしていた子も1ヶ月も経てば、すっかり新しい環境に順応します。家庭生活から集団生活へ、個人生活から社会生活へと、人間の持っている素晴らしい順応性によって、成長を遂げていきます。

第9代 園長 井藤壯太郎

「たくましさ」を考えるヒント(3)

ゴルフ場の芝生をたくましく育てるには、決して水をやりすぎない。

オオカワウソの子供をたくましく育てるには、自分で魚を捕まえる要領を母親が学ばせる。

生きものの体に元々備わっている「生きる力」を発揮して、植物・動物はたくましく生きているのです。

動物園で飼育されている動物も、「母親が子供を育てる」のが大原則だそうです。事故などで母親を亡くした子供を人間の手で育てることもあるそうですが、こうして育った動物を自然界に帰すと、生きていくのが難しいそうです(広島市立安佐動物園飼育係の方のお話)。動物の捕まえ方、天敵の見分け方、身の隠し方、など自然界で生きていく知恵を母親から授かっていないからです。

第9代 園長 井藤壯太郎

「たくましさ」を考えるヒント(2)

動物の世界から植物に目を向けると・・・

動物に比べて、静かにひっそりと生きている植物のどこに「たくましさ」があるのでしょうか?

植物の成長には、光と水が必須です。しかし、光も水もたっぷり与えればよいのではありません。

「ゴルフ場の芝生の根を強く張りめぐらせるには、毎日、水をやってはいけません。四~五日間水をやらずに乾燥させ、もう枯れるかな、と思うころに水を与えるのがよい」(田中 修著「植物のあっぱれな生き方」より)
水のたっぷりあるところ(順境)では、植物の根はあまり成長せず、逆に、水の少ない乾燥した土地(逆境)では、一生懸命水を求めて、根を成長させるのです。
逆境をバネにして、自力で、自らを成長させる。この「たくましさ」には感動します。

第9代 園長 井藤壯太郎

「たくましさ」を考えるヒント(1)

幼稚園に通ってくる幼い子供たち。人生80年の時代、待ち受けている世間の荒波をたくましく生き抜いてほしいと願うばかりです。

たくましく生きる、たくましく育てる。「たくましさ」とは一体何なのでしょうか? 生存競争の厳しい動物の世界を見ると、「たくましさ」を考える上での良いヒントがあります。
オオカワウソというイタチ科の哺乳類の動物がいます。手足は短く、水中で口で魚を捕まえては食べています。このオオカワウソの母親が、子供に魚の捕り方を教えているところをテレビで見ました。
川の中で、母親が捕まえた魚を口にくわえ、少し噛んで魚を弱らせ、川に逃がす。子供はその逃げた魚を捕まえようとするのですが、逃がしてしまう。再度、母親は魚を捕まえ、口にくわえ、逃がす、という動作を延々と繰り返します。子供が自力で魚を捕まえられるようになるまで・・・

たくましく育てるには、愛情だけではなく厳しさ(実は本当の愛情)が必要なのです。

第9代 園長 井藤壯太郎